管理美容師になるにはどうすればいい? 役割や取得方法について解説
お客様に美を提供する場所である美容室では、安全面や衛生面の管理をしっかり行わなければなりません。お店の安全・衛生を管理するための美容師資格の一つに、管理美容師があります。聞いたことがない方もいるかもしれませんが、美容師としてキャリアアップを考えているのなら、管理美容師の資格を取得するのもおすすめです。
そこで本記事は、管理美容師について業務内容や目指す方法、将来性などを詳しく紹介します。「美容師免許以外の資格を持ちたい」「美容師としての強みを作りたい」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
管理美容師とは?
管理美容師とは衛生管理や公衆衛生に関する専門的な知識を身に付け、美容室で安全に業務を行うための衛生措置を行える美容師のことです。
美容室では、施術で刃物であるハサミなどを使用します。そのため、けがを防止する対策を講じ、万が一お客様にけがをさせてしまったときには適切な処置をしなければなりません。また直接お客様の肌や髪の毛に触れるので、感染症対策なども必要です。管理美容師は、美容室で衛生管理の責任者として衛生管理と環境整備を行い、お客様もスタッフも安心して過ごせる環境作りを行います。
美容師法・第12条の3には「美容師である従業者の数が常時2人以上いる美容所の開設者は、衛生的に管理させるため、美容所ごとに管理者を置かなければならない。」と定められています。ここでいう管理者というのが、管理美容師のことです。2人以上の美容師がいる美容室であれば、管理美容師を必ず採用する必要があります。(※)
※出典:厚生労働省「美容師法 」
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管理美容師の業務内容
管理美容師の資格を持っているとしても、基本的な業務内容は一般的な美容師と同じです。ただ、管理美容師は一般業務に加え、以下のような業務を行います。
- 美容室が法律や自治体の条例にのっとり、衛生環境を保てているかをチェックする
- 美容室にある器具や設備の洗浄・消毒が正しく行われ、衛生的かどうかを点検・管理する
- 十分な換気ができているかを点検・管理する
- 従業員に対して衛生教育を実施する
- 従業員の健康状態を管理し、感染症などにかかっている従業員がいる場合は届出を行う
上記の業務は管理美容師の資格を取得していなくてもできる業務です。しかし衛生管理と公衆衛生に関する正しい知識が必要になるため、その知識を持つことを証明する管理美容師が行わなければなりません。
管理美容師の資格が廃止されたという噂は本当?
美容師として働いている方や美容専門学校に通っている方は、「管理美容師の資格が廃止になった」という話を耳にしたことがあるかもしれません。
管理美容師資格が廃止になったという噂があるのは、2010年に行われた事業仕分けが原因です。実は管理美容師の資格は、事業仕分けで一度「廃止」の結論が出ていました。(※)
しかし2023年3月現在、管理美容師の資格はいまだ廃止されておらず、継続されています。
※出典:厚生労働省「管理理容師・管理美容師指定講習事業 ワーキンググループ 報告書(案)」P4
管理美容師になるにはどうすれば良い?
2人以上の美容室では必ず採用する必要のある管理美容師には、どうすればなることができるのでしょうか。管理美容師の資格を取得するための条件や、資格の取得方法を解説します。
国内で3年以上美容の業務に従事している
管理美容師になるためには、美容師免許を取得し、日本で3年以上美容業務に従事していなければなりません。
資格を取得するためには、この後紹介する「管理美容師資格認定講習会」の受講が必要ですが、受講申し込みの際には3年以上従事していることを証明する「美容業務従事証明書」の提出が必要です。なお複数の美容室で働き、合算で3年以上従事している場合は、過去に働いた美容室ごとに美容業務従事証明書が必要になります。
管理美容師資格認定講習会を受講する
日本で美容業務に3年以上従事し、受講条件を満たしたら、厚生労働大臣が定める基準に従って都道府県知事が指定した「管理美容師資格認定講習会」を受講してください。講習会は財団法人理容師美容師試験研修センターが実施しています。
講習の内容は、公衆衛生に関する講習が4時間、衛生管理に関する講習が14時間です。3日間講習を受講すると、管理美容師の資格を取得できます。講習内容は以下のとおりです。(※)
●公衆衛生
○公衆衛生と衛生行政
○感染症
●美容所の衛生管理
○衛生管理総論
○店舗の構造設備
○店舗の衛生管理
○従業者の健康管理
○消毒法とその用途
○美容業務に使用する医薬部外品など
○事故などの対応
○衛生管理計画と自主点検
○自主点検による問題点と改善策
○美容業に関わる各種の届出・申請
○衛生水準向上のための支援策
講習会の開催日程は、都道府県ごとに異なるので、財団法人 理容師美容師試験研修センターのWebサイトでお住まいのエリアでの開催日程を確認しましょう。講習会には定員があり、定員数を超えた場合は抽選制となります。都道府県によって年間の開催回数には違いがあり、それぞれの募集期間は約1週間です。先着順ではありませんが、事前に日程を確認し応募が開始されたら、できるだけ早く申し込みましょう。
※出典:厚生労働省「管理理容師資格認定講習会及び管理美容師資格認定講習会の指定基準の運用について 」
受講の手順
管理美容師資格認定講習会を受講するための手順を簡単に紹介します。
1. 管理美容師資格認定講習会の受講資格を確認する
2. 財団法人 理容師美容師試験研修センターの公式ホームページにアクセスする
3. Webサイトもしくは郵送でエントリーする
4. エントリーが確定したら、期日までに受講申込書類を提出する
5. 送付される受講者票を受け取る(講習会の約1週間前が目安)
6. 3日間の講習を受ける
3日間の講習会を修了すると修了証書が交付され、管理美容師の資格を取得したことになります。なお、応募が定員に達して抽選に外れてしまった場合は、落選通知が送付されます。
またWebサイトで応募する場合は、募集期間中のみエントリーフォームに入力が可能です。メールアドレスを入力して仮エントリーを行ったのち、送信されるURLにアクセスして本エントリーを行ってください。
管理美容師の将来性・キャリアステップは?
管理美容師には、どのような将来性・キャリアステップがあるのでしょうか。ここからは管理美容師の資格を取得するメリットやキャリアステップについて解説します。
転職・昇格に有利
通常の美容師業務に加え、衛生管理や公衆衛生に関する正しい知識を持っている管理美容師は、転職や昇格において有利になります。美容師が2人以上在籍している美容室では、必ず管理美容師が必要です。また、管理美容師の資格があることで、十分な知識があることを簡単に証明できます。
例えば新規オープンする美容室で、技術レベルや接客レベルが同等の美容師が2人、求人に応募した場合、管理美容師資格を持っている美容師の方が採用される可能性が高いでしょう。
すでに管理美容師がいる美容室だったとしても、衛生管理や公衆衛生に関する正しい知識を持つ美容師が多いことに越したことはありません。転職を考えていない場合でも、管理美容師の資格を取得したことで、働いている美容室で昇格や昇給できるチャンスが得られます。
独立したときに管理美容師を雇用する必要がない
将来独立して自分のお店を持ちたいと考えている方も、管理美容師の資格が役立ちます。美容室を開業し、自分以外の美容師を雇う場合は、必ず管理美容師の資格が必要です。自分自身が管理美容師の資格を取得していれば、別途管理美容師を雇う必要がありません。
また管理美容師を取得している美容師を雇用したとしても、2人以上美容師がいる美容室の場合、管理美容師が辞めてしまうと営業ができなくなってしまいます。自分で管理美容師の資格を取得していれば、従業員の退職によってサロン経営が左右されてしまう心配がなく、安定した経営が続けられるでしょう。
美容室を責任を持って経営するためにも、管理美容師資格を取得しておくのがよいでしょう。
まとめ
本記事では、管理美容師の業務内容や資格の取得方法、取得した場合のキャリアステップなどについて解説しました。管理美容師の資格を取得していれば、転職や昇格に有利になり、将来開業する際にも役立ちます。
また管理美容師の資格取得のために学ぶ内容は、美容師として重要な知識でもあるため、資格を取得しておいて損はありません。美容師としてさらに活躍したい方は、管理美容師資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。
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