福祉ネイルとは?ボランティアと何が違う?サービス内容とやりがいについて
「福祉ネイル」という言葉を聞いたことはありますか?
高齢化社会となった現在、高齢者向けのネイルサービスの需要が増えてきています。手元を美しく見せられるネイルを希望する人は、高齢者の方にも多くいらっしゃいます。こうした要望を叶えるべく、老人ホーム等の施設に赴き高齢者の方にネイルを施術するのが、福祉ネイルです。福祉ネイルについて、その施術内容や魅力・やりがい、将来性などについて解説します。
福祉ネイルとは
主に、高齢者・病気や障がいを抱えている方、自宅療養中の方や移動が困難でネイルサロンに行くのが難しい方が対象であり、老人ホームや利用者の自宅に訪問してネイルを行います。 「福祉ネイリスト」は、その方たちにネイルを施す職業で、ネイリストは、老人ホームや介護施設に出向いて利用者にネイルを行います。
施術内容
一般的なネイルサロンでの施術とは異なり、ジェルネイルを使うことはあまりありません。
ネイルケア、ハンドマッサージなどの基本的なケアを中心に行い、マニキュアを軽く塗る程度だったり、ご要望に合わせてアートを施します。高齢者・障がい者の方を対象としている為、1人1人の状態や体調に考慮して施術します。施術に時間がかかってしまうと、疲れてしまうこともあるので、利用者の負担にならないよう20-30分程度で仕上げます。マニキュアも、安全性が高く速乾性の優れたものを使用します。一般的なネイルサロンでは、来店されたお客様に、マニキュアやジェルネイルを行い、爪を綺麗に魅せることがメインの目的になりますが、福祉ネイルは、爪を清潔に保ち、施術を通して癒しや精神的な安定を目的とする割合が高いといえます。
福祉ネイリストに資格は必要?
福祉ネイリストとして働くために、必須となる資格はありません。
しかし、ネイルの仕上がりや利用者の方の体調を確認しながら最適な施術を行う為に、ネイルや介護に関しての知識や資格を持っておくことはプラスになるでしょう。より利用者の方からの信頼を得やすくなるといったメリットもあるので、取得をおすすめする資格を以下でご紹介します。
- JNECネイリスト技能検定試験
- JNAジェルネイル技能検定試験
- 介護職員初任者研修
福祉ネイリスト認定制度とは
「福祉ネイリスト認定制度」という資格講座があります。
これは、一般社団法人日本保健福祉ネイリスト協会の認定校にて、講義や実技講習を受講後、合格者は講師とともに福祉施設での実地研修を行い、合格となれば、ディプロマ(証明書)が発行されます。福祉ネイルの認定を受ければ、介護スタッフが福祉ネイリストとして利用者の方に施術ことも可能です。
福祉ネイルで注意すること
福祉ネイルを行う上で、注意しておきたいポイントがあります。
利用者の中には認知症を発症していたり、その他の病気やケガをしている場合があります。
認知症の方の場合、施術中に急に立ち上がる・大きな声を発するなどの可能性があり、ケガにより施術できない指がある場合などが考えられます。施術に関して注意しないといけない方の特徴を教えていただき、事前に利用者の方の健康状態を確認し、対処しながら施術しましょう。また、どのくらいの施術時間なのかを伝えておくのも大切です。福祉ネイルでは、基本的に短時間で終わる内容となっていますが、中には長く感じる方がいるかもしれません。ある程度の時間がわかっていれば、安心して施術を受けてくれるでしょう。
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福祉ネイルのやりがい
福祉ネイルは、美容を追求するだけの仕事ではなく、社会貢献の側面も持っているので、高齢化の進む日本社会において、高齢者を美容の領域から支えることができる職業といえます。実際、認知症を患った方にネイルを行ったところ、身だしなみに気をつけるようになったり、他者との関わりに変化が出てきたりと、認知症の周辺症状が軽減する例も少なくありません。
手元を美しく整えることで、清潔感や品のよさを感じることができ、また、一番視界に入りやすく自分で変化を感じやすい為、気持ちを高揚させたり落ち着かせたりする心理的な効果が期待されます。
福祉ネイリストの一番のやりがいは、「利用者の笑顔を見られること」「ありがとう」の言葉をもらえることで感じられます。日本保健福祉ネイリスト協会では福祉ネイリストの使命を「美容を通じて感動を与えること」と掲げています。その言葉通り、福祉ネイルを提供している福祉ネイリストたちは、高齢者の方や病気や障がいを抱えながらも懸命に生活している方に対してネイルを行うことで利用者の方に感動を与え、やりがいを感じながら活動しています。
福祉ネイリストの働き方
福祉ネイリストの主な訪問先は、高齢者・障がい者の方の入所施設や通所施設、また、依頼によっては個人の家に訪問する場合もあります。基本的に福祉ネイリスト側がネイルセットを持参して訪問します。正社員ではなく、ほとんどが個人としての活動となります。給与や働き方など、以下で詳しく説明していきます。
福祉ネイリストの給与や待遇について
働き方は、個人で活動する(開業、フリーランス)か、企業に所属する(業務委託やアルバイト)という勤務になります。中でも、施設や事業所からの業務委託契約という形で働くことが多いです。収入は、一人当たり1,000円~3,000円程度が相場と言われています。
施術の時間は約20分なので、1つの施設でたくさんの方を施術することができれば、それだけ収益を上げることができます。活動時間や契約数が個人によって異なるため、収入はそれぞれ異なり、まだ福祉ネイルというものが広く普及していないこともあり、この仕事だけで生活していくのは努力が必要です。
多くの方はネイルサロンとの掛け持ちや、他の仕事と両立させながら活動しているが現状です。日本保健福祉ネイリスト協会などの団体に所属すると、訪問施設を紹介してもらえる場合もあるのでおすすめです。
ネイルボランティアとは
福祉ネイリストが有料サービスなのに対して、「ネイルボランティア」とは主に介護施設などでネイルケアやカラーリング、ハンドトリートメントなどの施術を無償で行うことです。福祉ネイリストはビジネスで、ネイルボランティアは無償のボランティアであるという違いがあります。「ネイルを通して利用する方に元気になってもらいたい」という目的は、福祉ネイルもネイルボランティアも同じです。
ネイルボランティアへの参加方法
ボランティア活動を多く行っているNPO団体や、地域のボランティア団体で、ネイルボランティアを募集していることも多くありますので、まずは「ネイル ボランティア」等で検索してみましょう。そこで、開催日程・場所等の情報を入手し、当日現場に向かいます。参加の際の交通費などはすべて実費になります。ネイルに必要な道具もすべて自分で用意となります。ビジネスではないことを踏まえ、無理をしないこと、また自分ができる範囲でネイルボランティアに参加してみましょう。
まとめ
福祉ネイルでは高齢者と話しコミュニケーションをとり、手に触れ、さらに施術を行うブースまで立って歩いて来てもらいます。こうした一連の動作は、ユマニチュード(認知症の人に向けたケアの方法)の介護手法そのものと言っても過言ではありません。さらに、「いつまでもキレイでいたい」「おしゃれをしたい」とする高齢者の方の希望を叶えることもできます。
そして、活動をしている福祉ネイリストたちは、高齢者や障がい者の方に元気や希望を与えることができるということを実際の体験を通して実感し、とても大きなやりがいを持って活動していけるでしょう。福祉ネイルは、進行し続ける日本の高齢化に対し今後さらに必要とされるかけがえのないサービスとなるでしょう。