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美容師の社会保険完全ガイド:加入条件と手続方法を徹底解説

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美容サロンで働く女性は知っておきたい保険の話! 社会保険と民間保険について詳しく解説

美容サロンで加入できる保険には、一般的な企業で働く人も加入する公的保険と、任意で加入できる民間保険の2種類があります。一定の条件では公的保険でも加入する必要がない場合もありますが、民間保険も万が一に備えて加入しておきたいものです。今回は、美容サロンで働く方や個人事業主として開業したい方なら知っておきたい、美容サロンにおける保険について解説します。

美容サロンが加入する「保険」とは?

美容サロンが加入する保険は、大きく分けて公的保険と民間保険の2種類があります。国が運営する公的保険はケガや病気、失業などに対して必要な給付を行うための保険で、従業員が1人でもいる法人に加入が義務付けられています。一方、民間保険は公的保険ではカバーしきれない分を補う役割があり、保険会社が提供する保険なので任意加入となる点が、公的保険と大きく異なる点です。



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社会保険(公的保険)とは?

公的保険である社会保険は、主に以下の4種類があります。それぞれどのような内容が含まれる制度なのか、詳しく解説します。

健康保険

ケガや病気で医療機関を受診する際、かかった医療費の自己負担額が軽減される制度です。健康保険に加入していると保険証が交付され、その保険証を医療機関に提出することで、医療費が1~3割負担となります。



健康保険は医療費の自己負担額が減るだけではなく、一時金や手当金の給付が受けられる点も特徴です。医療費の限度額を超えた分が払い戻される「高額医療費制度」、療養中の生活を保障するための「傷病手当金」などの制度も健康保険に含まれます。



女性が注目したいのが、出産時と出産後に受けられる2種類の給付金です。「出産育児一時金」は出産費用軽減のため、「出産手当金」は出産後の生活保障として支給されます。なお、出産育児一時金は2023年よりこれまでの42万円から50万円に増額されています。

厚生年金保険

働いている期間中に毎月保険料を納め、60~70歳になった時点から老齢年金を受け取れる制度です。保険という名称ですが、年金加入は国民の義務です。法人で加入するのが厚生年金保険ですが、これは国民年金に上乗せされています。つまり厚生年金保険加入者は国民年金の被保険者でもあり、2種類の年金保険に加入していることとなるわけです。



老齢年金以外にも、年金保険の被保険者が受け取れる年金には、障害者となった場合に受け取れる障害年金、年金受給者または被保険者が死亡した際その配偶者や子供が受けられる遺族年金があります。

労災保険

労災保険とは、従業員の勤務中または通勤中に負ったケガや病気に対して保険給付が行われる制度です。労災保険ではケガや病気の療養にかかる費用のほか、仕事を休んだ際に一定の条件で受けられる休業保障給付、高度障害が残った場合の障害補償給付、死亡した場合の遺族補償給付などが受けられます。労災保険は従業員の保険料負担がなく、法人が保険料の全額を支払う点が、健康保険や厚生年金保険と異なる点です。



雇用形態にかかわらず従業員を1人でも雇用している法人は、労災保険への加入が義務となっています。代表や役員のみの法人、個人事業主などは労災保険への加入は義務付けられていませんが、申請することによって任意加入が可能です。

雇用保険

雇用保険は、加入した従業員が解雇または退職した際に求職者給付、いわゆる失業手当を受けられる制度です。退職した際に支払われていた給料の一定割合を、求職者給付として受け取れます。雇用保険には加入条件があり、1週間の所定労働時間20時間以上、かつ31日以上の雇用見込みがある従業員のみ加入可能です。つまり、この労働時間と雇用期間以下で働く場合は雇用保険に加入できず、労働時間と雇用期間が長いとしても昼間学生も対象外です。



退職後に求職者給付を受け取るには、一定期間以上勤務している必要があり、求職者給付を受けられる期間も、年齢や被保険者加入期間によって変動します。

美容サロンが社会保険に加入していないのは違法?

美容サロンが社会保険に加入していないのは違法?

社会保険未加入の美容サロンが違法かどうかは、法人か個人事業主かによって異なります。そこで雇用保険と労災保険の「労働保険」、健康保険と厚生年金保険から成る狭い意味での「社会保険」の2種類に分けて、加入条件や美容サロンの加入要否について解説します。

法人の場合

法人に対しては、労働保険と社会保険いずれも加入が義務付けられています。



労働保険は労働者が1人でもいる事業所は加入しなければなりません。ただし、役員のみの法人の場合は加入の必要はありません。事業所が加入の対象となった場合、労災保険は原則すべての労働者が加入し、雇用保険は法令に定められた常勤の条件に該当する労働者が加入の対象となります。社会保険は法人であればその事業所は加入が義務付けられており、役員のみの法人でも加入義務があります。そのため法人であれば、被保険者の条件を満たす従業員は必ず社会保険に加入します。被保険者の条件は、法令に定められた常勤の従業員ですが、パートタイムやアルバイトなどで働く人も一定の条件を満たせば加入対象です。



労働保険と社会保険の加入条件を満たしているにもかかわらず未加入の場合は、罰則が科されることがあるので注意が必要です。労災保険には費用徴収制度として労災保険からの給付金の全額または一部の支払いが求められ、雇用保険は6カ月以下の懲役または30万以下の罰金が科されます。社会保険未加入時も、過去2年に遡及して保険料の徴収のほか、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されるなどの罰則があります。

個人事業主の場合

個人事業主の場合は、従業員の有無で社会保険の加入義務が異なります。従業員を雇用している個人事業主は、雇用している従業員の数によって労働保険と社会保険の加入が必要です。労働保険と社会保険で加入義務の適用範囲が異なり、労働保険は1名以上、社会保険は5名以上の従業員を雇用している場合に加入義務が発生します。



ただしこれは従業員のために加入する保険のため、個人事業主本人はどちらも加入対象はなりません。

未加入に対する罰則は個人事業主の場合も法人と同様です。ただし一人親方や個人経営で従業員がいない個人事業主は、労働保険と社会保険いずれも加入の対象外です。



個人が営んでいる美容サロンでは、労働者が一人でもいれば労働保険が強制加入ですが、社会保険は強制加入ではありません。なぜなら、美容サロンは社会保険の非適用業種に分類されるので、任意適用という扱いになるからです。つまり、個人経営の美容サロンの場合、上記の条件に該当しなければ加入していなくても違法とはなりません。

美容サロンは民間保険への加入が必要な理由

では次に、美容サロンの民間保険について見ていきましょう。美容サロンはお客様の体に触れて施術を提供するのが仕事なので、施術中に思わぬトラブルや大きな事故につながるリスクも否定できません。その他にも施設内の不具合や事故、お客様の荷物盗難や破損などのトラブルのリスクが考えられるでしょう。



これらの想定されるリスクに対して何の保険にも加入していない状態では、従業員やお客様に万が一トラブルが発生した際の保障が何もない状態となってしまいます。リスクに備え万が一のトラブルに適切に対処するためには、民間保険への加入が必要です。

【美容サロン別】民間保険が必要になるトラブルの例

【美容サロン別】民間保険が必要になるトラブルの例

美容サロンで提供する施術でトラブルが発生した際、民間保険に加入していれば保障してもらえます。では、具体的に美容サロンではどのようなトラブルが考えられるのか、美容サロンの種類別のトラブル例をご紹介します。

ネイルサロン

ネイルサロンで起こり得る特有のトラブルには、爪を切りすぎてしまったり甘皮処理で傷をつけてしまったりするなど、お客様の指を傷つけてしまう施術ミスが起こるケースがあります。施術当日は問題なかった場合でも、後日施術が原因で日常生活に支障をきたしたという理由で損害賠償請求を受けることがあります。サロン内での転倒などの事故、販売している商品によるトラブルも。

またネイルサロンに限らず美容サロン全般で起こる可能性があるのが、お客様の荷物の盗難や破損、サロンの盗難被害、天災による被害です。

エステサロン

エステサロンもお客様の体に触れて施術を行うため、施術内容やエステティシャンの機器操作・施術ミスなどによってさまざまなトラブルが考えられます。どんなに熟練のエステティシャンでも、ミスを完全になくすことは困難でしょう。脱毛を行っているサロンではレーザーや熱を使った脱毛器で施術を行うので、火傷などの肌トラブルが起こる可能性があります。



痩身やリラクゼーションを行っているエステサロンで多いのが、筋肉や骨格、関節への施術を行った際の捻挫です。場合によっては骨へひびが入ったり骨折したりすることも考えられます。エステサロンで販売したコスメや食品、サプリメントも、使用することで体の不調を訴えられる可能性もあるため、トラブルを引き起こす原因の1つです。

アイラッシュサロン

アイラッシュサロンでは目の周囲に施術を行うので、トラブルにつながりやすいものです。グルー(接着剤)やツイザー(ピンセット)が誤って目に触れてしまっただけでも、目に傷をつけてしまったり炎症を起こしたりする原因となってしまいます。目の周囲はデリケートなので、サロンで使用したものが肌に合わず、アレルギー反応を引き起こすことも考えられます。グルーで付けたまつげエクステが重力で落ちてしまい目を傷つけることがあることも、アイラッシュサロンで起こる可能性が高いトラブルです。



アイラッシュサロンでのトラブルは、最悪の場合失明につながる恐れがあるため、万が一に備えた民間保険への加入は重要といえます。

美容サロン向けの代表的な民間保険

上記のように、美容サロンではさまざまなトラブルが起こり得ます。そのようなトラブルに備えるためには、民間保険への加入が大事です。民間保険には多くの種類があり、それぞれ補償内容も異なります。



美容サロン向けの代表的な民間保険を、お客様に関わる保険と経営に関わる保険の2種類に分けて解説します。

お客様に関わる保険

美容サロンで起こる可能性が高いのが、お客様への施術の際に起こるトラブルです。施術中の事故や施術、販売した商品が原因で起こり得るトラブルへの対処、お客様の私物に関わるトラブルに対処できるのが、以下の民間保険です。

施設賠償責任保険・施設所有(管理)者賠償責任保険



美容サロン内で発生したお客様のケガや事故をカバーする保険です。エステティシャンの施術ミスや施術機器の故障でケガを負わせてしまった場合、店内でお客様が転倒などによりケガをした場合など、賠償責任を負った際に保険金が支払われます。店舗の建物の欠陥や欠損が原因で起こったトラブルに対しても、補償されます。

受託者賠償責任保険



美容サロンに訪れたお客様から預かった荷物の盗難や紛失、破損や汚損に備える保険です。加入する保険会社によってカバーされる範囲が異なり、盗難、紛失、破損、汚損のいずれか、またはすべてが受託者賠償責任保険の対象となります。

生産物(PL)賠償責任保険



美容サロンで販売またはレンタルした商品で発生した損害やトラブルを補償する保険です。サプリメントや美顔器などの販売やレンタルをし、それらの商品で体調不良や肌トラブルなどを訴えたお客様への賠償金をカバーできます。

経営リスクに備える保険

経営リスクに備えるには、以下に挙げる美容サロンに経営に関わるリスクに備えられる保険もあります。

事業活動総合保険



美容サロンで起こり得る火災や自然災害などをカバーする保険です。火災保険の一種ですが、地震や豪雨被害などによる建物被害にも適用されるほか、これらの予期せぬ被害による建物の保証や営業休止した際の休業補償も含まれるので、火災保険よりもカバーできる範囲が広い特徴があります。

事業用火災保険



事業として使用している建物向けの火災保険です。賃貸物件では、貸主指定の火災保険に加入しなければならない場合があります。自宅サロンの場合は個人向け火災保険に加入していることが一般的かもしれませんが、併せて事業火災保険にも加入しておくことをおすすめします。

借家人賠償責任保険



原状回復義務がある賃貸物件の美容サロンにおいて、建物の火事や窃盗などの被害をカバーする、火災保険のオプションとなっていることも多い保険です。賃貸物件でサロンを経営している場合は、加入しておいた方がいいでしょう。

経営者保険



経営者保険とは、経営者が働けなくなった際に備えた保険です。美容サロンの経営者がケガや病気で仕事ができなくなると売上が減少し、光熱費などの固定費、給与支払いまで滞ることが考えられます。経営者保険は、サロン経営そのものがストップしても経営者と従業員双方に不安がないよう、金銭的な負担を軽減できる保険です。

美容サロンで働く際は各種保険に加入しているかチェックしよう

勤務先の美容サロンで公的保険と民間保険に両方に加入していれば手厚い補償が期待できます。しかし、美容サロンの場合は個人経営か法人かによって加入状況が異なるため、勤務先によってカバーできるトラブルの範囲も大きく異なります。補償範囲が限定的な美容サロンでは、万が一のトラブル時の補償も不十分で、収入やキャリアに影響することも考えられます。そのため、美容サロンで安心して働く際は、勤務先の保険加入状況をチェックしておきましょう。



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